本研究は、中世末期から近世初期にかけての古辞書に掲出される漢字が、現代のJIS漢字によってどれだけ符号化が可能なのかを検証することを目的とする。 本年度は、古辞書としてキリシタン版『落葉集』を取り上げ、中世末期の実用的な辞書に掲出される漢字について調査した。この調査は『落葉集』本文を電子テキスト化し、これに計算機上で処理を行うことによって進められており、比較的電子化の容易な資料を用いたことで、今後の研究に向けての技術的な問題点の把握とその克服をも目的としている。その成果は以下のとおりである。 1.『落葉集』本文を電子テキスト化した。 2.プログラム言語Perlを用いて『落葉集』掲出漢字の単漢字総索引を作成した。 3.『落葉集』掲出文字種の内容調査を行い、併せてこれがJIS漢字によってどれだけ包摂可能かを検討した。 4.異字体・異字形の掲出方法についての検討を行い、『落葉集』編集段階に於ける方針について検討した。 以上の成果によって、中世末期から近世初期にかけての古辞書とJIS漢字とを比較する方法が確立されたので、今後の調査に大きく資するものと考えられる。
|