今年度は昨年度に引き続き、新感覚派文学に特徴的な言語観を、1920年代マス・メディアの拡大にともなう文学受容の場およびメディア状況の変容という視点から解明するべく、継続して研究を進めた。 様々なマス・メディアが交錯する1920年代で特に力点を置いたのは、映画と出版である。出版のなかでは、1920年前後に創刊された総合雑誌「改造」(1919年創刊)と「文藝春秋」(1923年創刊)を重視し、これらの雑誌が作家の創作ならびに表現とどのように関連するかを検討した。 このような研究計画のもと、今年度は、大学院生やデータ入力に習熟した社会人の助力を仰ぎながら、前年度に調査、収集したデータを整理する一方、研究成果を公表することに力を注いだ。 現段階で公表した主な論文は、以下の4点である。「出発期「文藝春秋」のメディア戦略」(「日本近代文学」第66集日本近代文学会2002年5月185-201頁)、「新感覚派の光と影」(「文学」第3巻第6号岩波書店2002年11月123-132頁)、「一九二八年の横光利一-上海へ、新たなる展開への模索」(「アジア遊学」第48号勉誠出版2003年2月198-207頁)、「出版メディアと作家の新時代-改造社と横光利一の一九二〇-三〇年代」(「文学」第3巻第8号岩波書店2003年3月35-51頁)である。
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