<説法>と称される一連の言説に<経釈>を位置付け、その構造を明らかにするとともに、法会における一連の所作として、学侶の研鑽を明らかにするために行われた<論義>と、これら<説法>における言説との関連性など見出した(福田晃編『唱導文学研究第四集』、三弥井書店、発表予定)。また<経釈>に限らず、<説法>における一連の言説として表白された<表白><施主段>についても伝本調査を行い、東寺観智院金剛蔵『十二巻本表白集』ほか、その本文を電子化するなど、それらの解読をすすめる準備を行った。 さらに、「説法の上手」とうたわれ、「説法道」を確立したと伝えられる、安居院澄憲の<説法>を相対化するために、澄憲以前に、多くの「説法詞」を草したことで知られ、その「詞」の多くが伝存する寛信について、その著作に関する調査と解読をすすめた。結果、『類雑集』の成立ほか、勧修寺流の形成についても私見を得た(勧修寺聖教文書調査団における夏期報告会において口頭発表した)。また、澄憲草を中心とする、安居院流の「説法詞」を伝える文献に関して、真福寺・神奈川県立金沢文庫・叡山文庫・東寺観智院金剛蔵・勧修寺などで伝本調査を行った結果、「説法の上手」で知られた澄憲が、天台教学の研鑽をすすめるべく「宗要」の編纂を手がけたむねを伝える文献を発見するなど、これまでの澄憲理解を覆す新見をも得た。
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