本年度の、主な研究成果は以下の通りである。まず、2001年5月12日に、稽古有文館の蔵書である『菅家世系録』について、「玉田永教著『菅家世系録』の資料的価値について」という題で、中古文学会春季大会(於専修大学神田校舎)にて口頭発表をした。本発表の内容は、『物語研究』2号に掲載予定であり、近世後期における菅原道真の人と作品の受容を問題にしている。また、2001年9月に、『寛文十年刊義経記CD-ROM版』を(株)エッグから公刊した。近年のデジタル技術の進歩による成果の一つであるが、国文学の資料研究の方法としては、まだまだ黎明期にあるものである。低コスト、高画質において保存と公表ができたことは、技術上の大きな進展であり、加えてズームアップ機能や、プリントアウト機能により、書物を越えた利便性が認められる。さらに、「稽古有文館(河本家)蔵古典籍目録」を、『米子工業高等専門学校研究報告』37号に、山藤良治氏と連名で発表した。この目録により、稽古有文館の蔵書が全面的に明らかになると同時に、一般に公開されたことの意義は大きいと思われる。事実、本目録に関して、多くの研究者からの反応があり、近世版本がその大多数を占めるとは言え、21世紀になった現在に、これだけのまとまった数(807種)の蔵書の発掘は例が少なく、学界ならびに地域にもたらす影響は少なくはないであろう。いずれにせよ、本年度に研究成果が大きく実ったことは明らかであり、来年度においても、さらに深い考察が可能なはずである。
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