琉球で使われていた官話が中国のどの地域の言語を反映しているのかを探るため、琉球における関連資料の精読と、ヨーロッパ人宣教師の手になる資料とその基礎文献の収集を行うことが本研究の目的である。 前年度においては、琉球における官話資料の一つである李鼎元の『琉球訳』についての考察を行い、唐話関連の資料の収集、分析を行った。それに加え、官話に関する欧州資料の文献収集・調査も併せて行った。 今年度においては、特に清朝の中国語官話資料であるJ.H.M.de Premare(中国名:馬若瑟)のNOTITIA LINGUAE SINICAE(『中国語ノート』1728年出版)について、そのラテン語の原文を1847年に出版されたJ.G.Bridgmanの英語版(The Notitia Linguae Sinicae of Premare)と対照し、その異同を精査した。中国語ノートの版本について、完本として出版された以前の版本についても文献収集と基礎的な校勘作業を行い、その成立過程を考察した。また、同時代、あるいは後生における中国語ノートの評価を調査するため、該書に関して記述した文献の収集につとめた。 今回の研究においては、唐話関連の資料の研究に関しては、資料収集のみにとどまり、文献ごとの詳細な分析は時間的、予算的制限から行うことができなかった。日本・琉球・中国・欧州における中国の官話の比較研究は今後の課題としたい。
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