1.平成13年度・平成14年度の両年度中に、日本聾唖連盟日本手話研究所編・米川明彦監修『日本語-手話辞典』(ISBN:4915675513:1997-06-15出版)に掲載されている日本手話の語(音節)すべてのコーディング作業を完了し、上記辞書をコーパスとする日本手話語(音節)の電子版データベース作成作業を完了した(総登録語(音節)数:9210、異なり語(音節)数:2610)。コーディング作業過程は2のとおり。 2.コーパス内のすべての語(音節)を4つのタイプ(片手手話・両手同手型同動作手話・両手同手型異動作手話・両手異手型異動作手話)に分類し、その各々を手型要素、位置要素、動き要素に分解・抽出各要素を記号化して表形式で記録した。また、音節(語)表出の際に、利き手の、非利き手または身体への接触の有無、接触する場合、どの部位にどのような接触をするかも記録した。 3.適格な音節(語)と不適格な音節(語)を区別するための手段に関して理論的検討を行った。その結果、情報理論で用いられている自己情報量の概念を用いて音節(語)の持つ情報量を表すことにより、適格・不適格な音節(語)の差異を表すことができるという知見を得た。 4.データを分析した結果、以下のような知見が得られた。音節(語)が担いうる情報量(当該研究では複雑度と呼び、音節(語)を構成する各要素の複雑度の総和を音節(語)の複雑度と定義する)には上限があり、複雑度の大きな要素同士が複数組み合わさることは禁止されている。すなわち、数学的に可能な組み合わせ(手型総数×動き総数×位置総数)のすべてが適格な音節(語)として存在するのではなく、音節(語)の持つ複雑度が一定量を超えるもの(約20ビット)は適格な音節(語)として存在できない。
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