本年度は、テーマに即した研究の基礎的作業として、主として2つ、すなわち現代日本の都市社会における地域コミュニティ秩序の変容における「差異」の位置づけの理論的分析と、「マイノリティ」問題に象徴される現代日本社会の多様化を一つの重要な契機かつ背景画とする司法制度改革についての調査研究を行った。 前者については、数年来続けている都市コミュニティ論、マイノリティ論(特にフェミニズム法学)、公共性論についての最新動向の検討を続行し、いわゆる構築主義的視点からの「差異」の相対化を基調とする近似流行の議論が、アクター間の「平等」を実現するためにどうしても「本質的」差異を前提せざるを得なくなる限界域にいかにして到達してしまうかについての考察を進めたが、まだ結論に至っていない。いずれにしても、現実のコミュニティ自治や女性運動、外国人問題の処理においては、「確信犯的に」本質主義を採用せざるを得ない面があることが確認された。 後者については、司法制度改革審議会の中心メンバーだった法学者へのヒアリングを軸に、公表資料などの幅広い検討を行った。日本社会が、「他者」(本研究ではもちろん外国人のことだが)と出会う出会い方を決定的に左右する司法のありようがダイナミックに変わりつつも、なお最も周縁化されてきた外国人に対しては変化が十分でない様子が観察された。 以上の点についてのより立ち入った分析と、本科研の本題である否定住型外国人問題についての調査は来年度以降の課題としたい。
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