フランス財政法学の誕生過程について、19世紀はじめから今日までの学説・実務の動向を対象としながら考察を行った。 1.経済学・公法学との関係 (1)19世紀に財政法学が、経済学の一部としての「財政学」から分離・独立した経緯について、J・B・セイからP・ルロワ・ボリュウに至るまでの学説をたどることによって、基本的な認識を得ることができた。とはいえ、フランスの経済学史については、他の諸国のそれと比較して既存の研究成果が著しく乏しいため、手探りで検討を進めている状況である。今後は、この時代の研究を完成されるとともに、20世紀における経済学の動向との関係にも注目したい。(2)他方、20世紀初頭にジェズをはじめとした公法学者によって財政の総合的研究がなされるようになったために、財政法が公法学に取り込まれ、公物法とともに公法一般理論の一部を構成するようになったことを明らかにした。(3)以上の成果については、来年度の日仏法学24号においてまとめて公表する予定である。 2.実務的問題 本テーマにかかわる問題として、会計検査と政策評価の関係があり、この点の考察をやや先行させた。これは、財政法が複合的科目として隣接分野と密接に関わっていることを示すという問題関心から出発したものである。フランスでは、アングロサクソン系諸国に比べて政策評価が立ち遅れているが、そのなかで財政統制機関としての会計検査院が、伝統的な経済学・財政学や公法学の成果を取り込みながら、積極的に政策評価に乗り出すようになった過程を明らかにした。
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