本研究は、フランス財政法学の歴史的展開を、おもに経済思想と公物理論との関係から考察したものである。 1.経済思想との関係については、19世紀以降の法学・経済学の分化の過程、財政学(science des finances)のなかでの法学的要素、行政法学のなかでの財政法研究(特に公会計制度研究)とその限界、20世紀初頭に総合科目としての財政論(finances publiques)が登場した経緯とその展開、といった視点から時系列的に考察した。その中心的成果は、日仏法学23号における論考「フランス財政法学の生誕と現状」にまとめられているが、他の一連の論考においても、理論的な基礎となっていることから、関連する歴史的記述をしている。 2.公物理論との関係では、オーリウ(M.Hauriou)らの学説分析から出発して、官庁会計に資産会計を取り込む可能性を考察した。特に自治研究誌上の論文「財政統制の現代的変容」において、今後の財政統制のありかたについて大きな方向性を示した。 3.経済的観点からの財政法分析の一環として、経済性・有効性・効率性の観点からなされる政策評価(フランスでいう管理統制)、さらにその評価主体のひとつである会計検査院をも、新しい考察対象に加えている。同時に、この観点から、フランスにおける2001年財政基本法改正を分析した。 4.このように本研究は、フランスの歴史研究を中心としながらも、現代の財政統制の考察を広く手がける足がかりになったと考える。
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