本研究では、平成13年度税制改正(「法人税法等の一部を改正する法律」(法律第六号))を常に念頭に置きつつ、まず、法人分割税制を取り上げることにした。その理由は、上記平成13年税制改正が商法の会社分割制度導入を契機として行われたからである。法人分割税制については、株主段階における課税と法人段階における課税という二つの問題がある。前者については、かつて論じたことがある(拙稿「法人分割と課税-アメリカ法を参考として-」税法学535号95頁(1996年)参照)ので、本研究では、主として法人段階課税について考察した。 この法人段階課税の問題については、最近のアメリカ法においても動きがある領域である。アメリカ法は、法人の合併や分割といった組織再編成(reorganization)について、80年以上の歴史を持ち、その間に規定および判例の変遷を繰り返してきた。そして、歳入法典355条(法人分割を規律する規定)に関しても、1990年に355条(d)、1997年に355条(e)という二つの規定を追加している。これらの規定が対象とする行為は、非課税法人分割を利用することによって、法人内部にある資産を選択的に切り出し、それを他へ移転する取引である。355条(d)および355条(e)は、当事者が移転対象資産を選択するという要素に着目し、一定の分割を売買類似の行為と捉え、資産の譲渡益について、法人段階で課税する規定であるということが、本研究により明らかとなった。 次に本研究では、アメリカ組織再編成取引の根幹をなす投資持分継続性(continuity of interest)原理について考察した。具体的には、組織再編成が非課税となるためには「どのようなタイプの対価(consideration)が交付されるべきか」、「どれくらいの量または金額の適格対価が受領されるべきか」、「組織再編成の後で、適格対価はどれくらいの期間、保有されるべきか」、「投資持分を継続しなければならない株主とは誰であるか」等について検討し、日本法との比較を試みた。
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