行政活動のガバナンス(ないしアカウンタビリティ)を維持させるのに役立つ諸制度として次の4つを取り上げて、行政法理論体系の再整理を行った。 1.ガバナンスの観点から見直した場合の、権力分立および地方自治制度について 権力分立は、行政活動に対する内閣・国会・裁判所(および会計検査院)によるコントロールの仕組みという側面をもつことを指摘し、その延長上に、日本国憲法にいう「行政権」「立法権」「行政権」の概念について従来の憲法学における通説的な理解(一義的に意味の決まったものとする静的な理解)を批判し、「原始的な権能の付与」として、また「同心円構造」を持つ概念としてこれを理解しなおすべきことを提唱した(既発表論文)。 上記は国の行政活動が念頭にあるが、地方公共団体における行政活動についても、基本的に同様の理解(長と議会によるコントロール、および国の行政機関によるコントロール)がふさわしいのではないかという方向での検討に入ったところである(論文準備中)。 2.ガバナンスの観点から見直した行政手続制度 行政手続制度について、権利保護という従来の表現を、行政活動の正しさの実現と言い換えることによって、ガバナンスの一制度として位置づけ、現在の行政手続法の一層の充実の方策について検討した。いわゆる準司法的手続を、日本法において正面から位置づけるためには、行政手続制度をこのような視点から理解することが必要であるとの結論に至った(発表予定論文)。 3.ガバナンスの制度としての情報公開制度(その対象機関性) いわゆる特殊法人・認可法人や、地方公社が、いかなる理由で、またどのような範囲で、情報公開制度の実施機関となりうるかの理論的整理は、ガバナンスの観点が無ければ無理であることについて検討した(既発表論文)。 4.ガバナンスの制度としての政策・行政評価 日米の政策評価・行政評価の概念のズレについて、検討した(論文準備中)。
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