アイルランド法を主たる研究対象とする今回の研究課題においては、与えられた研究期間が2年間継続していることから、現行法の解釈論や立法政策の動向の分析とともに、基礎的な学術研究である歴史的な対象把握、すなわち現行法に至るまでの生成・展開過程の分析を行うものとした。 初年度の平成13年度は、関連資料収集等の基礎的な準備作業の進捗状況を考慮して、当初設定した検討項目の順序に若干の変更を加え、主としてアイルランド憲法に関する次の3つの項目について分析作業を行った。 1.憲法の家族保護条項たる第41条をめぐる解釈論について。また、憲法に家族保護条項を有する他の諸国との比較について。2.アイルランドが締結した人権関連の諸条約(ヨーロッパ人権条約等)と憲法第41条との規範的関係について。3.社会保障・社会福祉関係の法領域、および家族・親子関係の法領域における、憲法第41条関連の裁判例について。 これらを通じて現行法の基本構造を明らかにした。この研究成果については、前述のとおり検討項目の順序に変更を加えたことから、今年度のみではまだ分析不十分な点が残るものと判断し、平成14年度の研究が一段落した段階であわせて学術論文の形で発表することとした。 なお現在準備中の社会福祉法制関係の予定稿(「アイルランド」仲村・阿部・一番ヶ瀬編『世界の社会福祉年鑑2002年版』所収。11月刊行予定)に、現時点までにこの研究によって得られた研究成果を取り入れている。
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