平成13年度は、7月の気候変動枠組条約第六回締約国会議再開会合を経て、10-11月に行われた第七回締約国会議で採択された京都議定書の遵守手続・メカニズムについての研究を進めた。議定書発効後に決定される予定の京都議定書の遵守手続は、従来の多数国間環境条約のもとでの遵守手続と比較して、司法手続類似の手続を利用して遵守確保をはかるという性格が強い手続となっている。遵守手続を担う遵守委員会、とりわけ、履行強制部は、議定書上の義務、すなわち法に照らして、遵守、不遵守を判断すること、手続の対象となる不遵守が疑われる締約国に十分な反論の機会を保証していることなどがこうした性格を示している。他方で、手続は、遵守手続に先立って行われる、排出量、吸収量の目録などの専門家による審査の段階から、不遵守国が、みずから不遵守を是正する機会を保障し、また、能力不足などの理由から生じる不遵守について支援を行うという手法をとっている。このことは、先述のように、司法手続類似の手続を利用して履行を強制するという手法をとりつつも、まずは、履行強制よりも遵守確保のために効果的な方法をとるという遵守管理(compliance management)を優先するしくみとなっていることを示している。このような遵守管理のもとでも、どうしても遵守しない国に対して、議定書上の制度をうまく利用した履行強制のしくみを備えている。こうした特質を有する手続が規則として明文化されたのは初めてだが、これまでの多数国間環境条約でも、こうした形で手続の運用はなされており、その意味で、京都議定書の遵守手続は、従来の「条約内慣行の法化」という側面を有する。 こうした司法的性格の強い遵守手続であるがゆえに、こうした「紛争解決手続の多重化」という現象のもとで、議定書の紛争解決手続や、WTOなどの関連する紛争解決のしくみとどのように関連し、どのように調整されるのかの検討が必要であり、これが次年度の課題である。
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