本研究は、IT革命期である現在において《経済社会の変革に応じて契約法がいかに変容するか、すべきか》という一般的問題を、「契約の相対効」という伝統的契約法の原則を素材として検討することを目的とする。本年度は、主として、アメリカ法を素材としながら「保証書の拘束力」の問題について、現在のUCC第二編改正作業における議論を手がかりに、その理論的背景を探った。メーカーが発行する保証書は、直接の契約関係にないユーザーが援用することになるが、なぜそのような権利がユーザーに生ずるのかが問題である。これは、直接の契約関係にない当事者間に恰も契約関係があるように扱う、コンピュータ・プログラムのライセンス契約の拘束力と通じる問題である。本年度は、アメリカにおけるライセンス契約にかかわる議論のフォローが研究の中心となった。 具体的には、NCCUSL総会(2001年8月)におけるUCC第二編改正作業の現地調査と、それに基づく議論の政治的・法的背景の分析に大部分の時間を費やした。アメリカにおけるここ数年の懸案であるUCC第二編の改正がなかなか実現しないのは、コンピュータ・プログラムヘの第2編の適用可能性について激しい意見の対立があるからである。研究の過程においては、(1)シンポジウム「ソフトウェアの保護と競争政策、情報公序論の交錯」報告(北海道大学法学部、2001年12月8日)、および、(2)産業構造審議会情報経済分科会ルール整備小委員会の「電子商取引等に関する準則(案)」(2002年3月)の作成過程で事務局(経済産業省商務情報政策局情報経済課)からの求めに応じた意見提出という形で、成果を還元している。
|