研究初年度である平成13年度は、(1)わが国における後順位抵当権者の地位に関する判例・学説を整理する基礎的な作業(2)担保法分野全体に関することとして、金融実務の歴史や最近の動向につき本学図書館・銀行図書館等において文献調査を行った。 このうち(1)の作業に関しては、従来から「後順位抵当権者の法的地位」が正面から論じられてきたテーマ(民法392条関連や根抵当法関連の文献など)だけでなく、民法や手続法の諸分野における議論を広く見渡し、担保目的物をめぐる紛争において後順位抵当権者の権利や利益につきいかなる評価がなされてきたか、またその評価はいかなる理論的背景を持っのか等の点にも目を配りつつ、横断的な考察を目指した。そして、本年度は横断的考察の予備的作業の一環として、特に先順位抵当権の被担保債権に消滅原因が生じた場合における後順位抵当権者の順位昇進の利益に注目し、この順位昇進の利益がいかなる場合に法的に保護されるものとして取り扱われてきたのか、そしてその理由や理論的背景はいかなるものであったかという観点から過去の判例・学説の再検討を試み、その成果の一部を論文として公表した。 平成14年度は、本年度の研究・調査を踏まえて、独法・仏法の分析とわが国の議論の再検討を行うとともに、金融実務についてのインタビュー調査等を実施し、現代における後順位抵当権者の法的地位の明確化を目指す予定である。
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