今年度は、社会福祉事業における内部組織のあり方についての研究をメインに進め、社会福祉法1条の第一種社会福祉事業を除いて、その経営主体が社会福祉法人以外の法人にも開かれたことを中心に考察を深めた。その結果、上記の政策変更(平成12年度施行の介護保険法と同年6月に施行された、いわゆる「社会福祉基礎構造改革」すなわち社会福祉事業法等改正法)がもつ法政策上の意義について、つぎのような結論に達した。すなわち、サービス供給業者としては社会福祉法人、特定非枝理活動法人または株式会社などの営利法人の間に根本的な差異はみられない。しかし、社会福祉法人が他の法人との間に独自の社会的意義を見いだすのであれば、なおも法人間の相違には法的な意味があるということである。問題は、その意義がどのあたりにあるかということであるが、これをサービス利用者・法人経営者・サービス従業者の間に横たわる「社会関係」の積極的形成におくという仮説を立てるに至った(この点は、後掲の拙著『これからの社会福祉と法』(創成社、2001年)129頁から138頁において発表した)。 そして、今年度の中頃から、運営協議会制度などを通じたユニークな法人運営に定評がある、社会福祉法人「黎明会」(札幌市北区)での実地調査を開始している。その調査結果は、現段階では途上にあるので、本報告書では割愛するが、来年度には仮説をほぼ実証できるような結果が得られる見込みである。なお、後掲の複数の論文は、この間の社会福祉基礎構造改革に関するもののほか、類似の分析が可能と思われる医療サービス供給の分野にかかる予備的な検討を含むものである。
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