平成14年度においては、諸文献を収集およびそれらを通じた研究を中心に行った。すなわち、国際労働機関(ILO)、国際連合(UN)、国際金融機構(IFI)、欧州連合(EU)、国際自由労連(ICFTU)(以上については、これらの機関が設定する国際公正労働基準について)、国際的宣言、企業による行動準則、消費者活動、世界貿易機構(WTO)、北米自由貿易協定(NAFTA)、特恵関税制度(GSPS)、最恵国待遇(MFN)、禁輸措置(IB)等について、必要な文献を集めるとともに、研究を進めた。その結果、これらすべてのものについて一応の概観を終えたため、一定の成果をあげるべく、現在論文を執筆中である(「国際公正労働基準の多様化(仮題)」という題目にて、青山学院大学法学論集において、平成14年度中の公表を目指している)。 次に、本研究遂行にとって必要なレビューを受けるために、適切な研究者を訪問し、かつ、所属研究機関において資料収集を行った。具体的には、まず、九州大学法学部吾郷教授を訪問して、国際法からの国際公正労働基準の捉え方について概括的なレビューを受けるとともに、必要な文献について紹介・提供して頂いた。次に、アジア諸国の労働法制と国際公正労働基準という観点からの研究が進んでいるメルボルン大学法学部を訪問し、リチャード・ミッチェル教授およびアンソニー・フォサイス講師にレビューを受け、必要な文献について紹介・提供して頂いた。オーストラリアの調査研究では、本テーマとの関連で重要となるような新たな観点が発見でき、非常に実りのあるものとなった(オーストラリアで進められてきた労使関係法制の改革と国際公正労働基準との抵触、これまで必ずしも注目されてこなかった労働市場法制と国際公正労働基準の関連等)。 なお本年度は、国際金融機構に関する国際公正労働基準設定活動という観点からの研究に関して、諸機関への調査研究が実行できなかったため(主に時間的の都合のため)、平成14年度に実施する予定である。
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