金融の自由化に伴い、専門的知識を有しない投資者が不測の損害を被ることが予想させる中で、「情報開示と投資者の自己責任」の問題等の考察により、投資者保護における刑事法のあり方を明らかにする本研究の目的にしたがって、以下の作業を行った。 1.従来十分な検討の対象となっていたとは言えない投資取引にかかる各種業法について考察を行った。そこに存在する罰則規定についての個別的な立法の経緯までは必ずしも明らかでないことがあるが、各業法には近似した(基本的な)犯罪類型が存在しつつも、しかし微妙な相違もあることがわかった。 2.消費者保護、投資者保護に関するこれまでの我が国の議論を収集し、これまで刑事法における分野において手薄であった関連テーマについての商事法研究者、民事法研究者による論稿にも配慮しつつ、その検討を行った。特にタームの使い方のずれには注意が必要であるが、民・商事法研究者による議論には、罪刑法定主義への配慮が十分でないものや、逆に、当該条文の保護する利益の実質について刑事法研究者によるもの以上に懐疑的なものが見られた。 3.投資取引にかかる被害について、判例に現れたもの以外も含めて、情報の収集・整理を行った。さらに、この作業については、来年度も継続することとしたい。 以上のことを踏まえて、来年度は、できれば、外国における調査を行った上で、問題解決の方向を提示するよう作業をすすめる所存である。
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