今年度の研究実績はほぼ当初の研究計画に沿ったものとなった。 (1)2001年6月にシチリアで開かれた国際刑法学会第1回若手会議に日本を代表して参加し、日本における汚職の現状と国際的な汚職への取り組みについて報告を行った。その後サレルノ大学において同大学アンドレア・カスタルド教授およびナポリ大学ステファーノ・マナコルダ教授と共に法人処罰に関するシンポジウムを実施した(いずれも英語)。成果のイタリア語訳は公刊予定である。特にマナコルダ教授は、EUの刑事法の統一を念頭に置いた「EUの財産的利益の保護に関する刑事法案」の作成委員の一人であってフランスおよびイタリアの経済刑法の専門家であり、大変有益な示唆を得た。次年度もこの分野の研究を継続し、他の委員の協力も得たいと考える。 (2)EU法に関する従来からの研究を継続し、2001年7月にルーヴェン大学のディミトリ・ヴァンオーヴェルベケ助教授を招いてEU法の将来の可能性に関する小研究会を成城大学にて実施した。また12月には神戸大学ミヒャエル・トレスター助教授らを招いてEUにおける法の統一とドイツの国内法との相互関係を検討する研究会「ドイツ法フォーラム」を桐蔭横浜大学において開催し、70名近い参加者を得ることができた。 (3)EU競争法における法人制裁の要件と内容とに関する研究を継続し、国際商事法務に論稿を公表した。これは日本で論じられている独禁法の制裁の改革に対する提言を行うものである。 (4)国際比較の点から見た近年の刑事立法の問題点につき、2001年11月に日本刑法学会東京部会において報告を行った。内容は刑法雑誌に公刊する予定である。 (5)このほか、薬物対策の国際比較および法文化の国際比較に関する小論をそれぞれ公刊した。
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