今年度は、先行研究の再整理や史料状況の再把握など、研究インフラの整備をおこなっただけでなく、中国大陸の第一歴史档案館の清末総理衙門・外務部档案および第二歴史档案館における中華民国外交部档案を、特に「中央・地方関係」を中心に収集し、また他方で台湾にて中華民国外交部の各時期の档案公開状況を再確認し、中華民国が台湾に移動してからの外交史について多くの示唆を得た。中でも、清朝末年の1911年前後に発生した朝鮮半島の租界をめぐる問題については、従来全く取り上げられていないだけでなく、朝鮮半島に中国が租界を有していたという事実、そしてそれをめぐる交渉で中華民国が「列強」として振舞おうとする姿は、中国外交史において新たなフィールドを開いたと感じている。この成果は2001年11月に対馬で開かれたシンポジウムで公表している。こうした点では平成14年度の研究目標のひとつである時期的な広がりは一部達成された。他方、戦後については、戦後補償問題についての史料(特に華僑)に関する分析を進めている。この点は次年度の課題となろう。そして、国内においては長崎において史料収集をおこない、現地の中国領事による領事裁判文書を閲覧して、今後の研究の課題となした。次年度の課題としては、特に欧米の史料との対象という点がある。朝鮮問題では特に問題とならないが、ワシントン会議やパリ講和会議、或いはチベット問題については、ワシントンやロンドン、あるいは欧州の各地域での史料収集が必要となるので、可能な範囲でおこなうとともに、単著の出版を目指したい。
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