研究概要 |
本研究は、民主化後10年を経た東中欧諸国において、政党システムに収斂傾向が看取されることから、その比較分析を試みようとするものである。しかしながら、その間に行われた2001年のポーランドの総選挙によって、未だ政党配列party constellation自体にも大きな変動の余地が存在することが明らかとなった(仙石学『年報政治学』2001年)。主たる研究対象国であるハンガリーでは、ポーランドほどの規模の変動は予想されていないものの、現在の世論調査の動向から、次期総選挙において、議会政党数が減少する可能性が指摘されている。他方で、政党システムの変容の分析に当たっては、政党と社会的亀裂の対応関係を主たる分析の視点とするリプセット=ロッカンの系統に属する研究の他に、サルトーリの政党システム分類に依拠して、その下位カテゴリー間での変動をシステム変動の基準に据える立場がP.Mairらによって唱えられており、J.Tooleの研究(Party Politics,6(4),2000.)は、この方向性を東中欧諸国に適応することが、豊かな成果をもたらす可能性を示唆している。但し、Mairの政党システムの安定性指標には、二大政党制やそれに類似した政権交代パターンに対する好意的バイアスが顕著である点は、留意する必要があると思われる。 以上の成果をふまえて、今後、残りの期間を通して行う研究の主要部分は、2002年4月に予定されているハンガリー議会総選挙と政党システムヘのその影響の分析に当てられる。近隣諸国との比較が、その後のテーマとなろう。
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