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本年度は本研究の最終年度にあたる。本研究の仮説は、グローバル化経済の進展による経済競合の激化と国家財政基盤の安定化目標という各国に共通の前提と目標は、福祉国家の基盤的な制度である医療保険制度に関して様々に異なった政策対応を導いており、この政策的な違いを生むものはグローバル化経済といった通説が用意する要因ではなく、むしろ(1)各国の戦後初期にその基礎がすえられた医療保険制度のあり方とともに、(2)各国における政権構成、すなわち社会民主主義政党が政権の中核にあるか、それとも保守系の政党が制度改革を実質的に推進したのかの違い、に規定されているのではないか、というものであった。昨年度は、各国(アメリカ・ドイツ・日本・オーストリア)において80年代から90年代にかけて実施された医療保険制度改革が、グローバル化経済、財政基盤の強化といった各国共通の要因では説明できず、むしろ各国の福祉国家制度の歴史に強く規定されていることを明らかにした。本年度は昨年度の成果である歴史的な洞察を踏まえたうえで、80年代、90年代という改革期の政治動態、とりわけ政党政治(政権構成のあり方や選挙を通じた政権交代)と福祉国家制度改革との連動関係を各国比較の枠組みに従って実証研究した。本年度の研究は、第二の論点であった、「政権構成」の左右軸が健康保険制度改革の方向性を決し、80年代から90年代にかけて先進各国で実施された制度改革の様々な経路を分ける決定的な要因であるという仮説の修正を求めるものであった。この結論は確かに積極的なものではないが、この結論に至る過程で、政党政治や政権構成が相対的な意味を持った諸国とそうではない諸国との違いが浮かびあがったことにより、なぜそうした違いが生まれるのかという新たな疑問が得られた。論文という形での成果の発表には、さらに幾分時間を要するだろうが、2年間の成果をさらなる展開につなげることは十分に可能である。
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