本研究では、1990年代を中心に展開した金融自由化政策に政治や官僚制、金融機関が与えた影響を明らかにする。今年度は、そのための作業として、まず第1に、1990年代の動きを整理するため、朝鮮日報等、韓国の主要な新聞に出てくる記事を整理した。その結果、部分的金融自由化の本格化は金泳三政権発足をきっかけにして起こっていること、その主たる動機は、当時韓国を襲った不景気からの脱出には、1980年代まで広範に行なわれていた政策金融では不可能であり、金融自由化が資金供給の代替手段であったことがおぼろげながら明らかになった。次に、韓国に出張して、金融改革をおこなうために設けられた金融発展審議会、金融改革委員会の答申、IMFとの議定書(Letter of Content)と金融政策担当者の発表した金融自由化計画に関する文書および関連する研究論文を収集した。政策当局者等の行動と金融自由化に関する基本的な考え方の整理は現在進行中である。収集の過程で、1970年代から1980年代への政策志向の変化が重要であることに気づき、それに関する文献も収集した。この分析結果は近々国際日本文化研究センターから発刊される村松岐夫教授編集の書籍「日本の政治経済とアジア諸国」所収の論文に反映させることになっている。なお、大統領-政党関係が経済政策に与える影響を分析するために行なった研究成果は、2001年度現代韓国朝鮮学会シンポジウム報告「不可解なハンナラ党」で公表した。この報告は修正の上大阪市立大学法学雑誌に掲載を予定している。
|