まず数量競争に基づく立地モデル、いわゆる立地一数量モデルの基本的な性質を明らかにした。まず、代表的なモデルである円環市場モデルを取り上げ、企業数が3以上の寡占モデルにおける立地パターンについて分析した。既存研究では円環市場では集積が起こらないとされてきたが、実際に全ての企業が一箇所に集積することはないものの、数カ所に多くの企業が集まる集積は均衡において表れることを明らかにし、しかもその集積のパターンは様々で、非常に多様な均衡が存在しうることを明らかにした。また、もう一つの代表的なモデルである直線市場モデルにおける、企業立地と経済厚生の関係を明らかにした。企業集積は、価格競争モデルと異なり、必ずしも経済厚生を損なうものではないことを明らかにし、集積は常に消費者の利益になること、市場規模に比して十分に輸送費用が小さい場合には集積が総余剰も最大化することを明らかにした。また、市場規模に比して輸送費用が大きい場合には、集積が経済厚生上望ましくないのにもかかわらず集積が起こる可能性はあるが、その逆はあり得ないことを明らかにした。 また応用研究として、独占禁止法の運用上の政策的な含意を得るために、企業立地と違法な企業間の暗黙の協定であるカルテルの安定性との関係を分析した。従来の研究では遠く離れて立地した企業間のカルテル程安定的であるとされていたが、数量競争モデルではそのような単調性は必ずしも成り立たないことを明らかにし、より近くに立地する企業間のカルテルの方が安定的になる可能性を明らかにした。 同時に、基礎的な研究として、企業の戦略的な行動について戦略的なコミットメントや情報戦略について分析し、タイミングゲームにおいて純粋戦略均衡が存在のための条件や純粋戦略均衡が存在しないケースでの混合戦略の性質についても明らかにした。
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