産業集積度測度を新たに開発し、1980〜2000年における日本のデータを用い、人口・人的資本・産業の空間分布にみられる自己組織化・パターン形成に関する実証分析を行い、本研究課題の実証的な基礎を築いた。第一に、各産業が立地する都市の数・平均人口規模・立地間隔の間には、安定的な対数線形関係が成立すること、都市間の産業構造に強い階層性が見られることなどが明らかにされた。このことは、例えば、各都市における立地産業数は時間とともに大幅に増加するものの、都市間の相対的産業数にはほとんど変化がないことを意味している。第二に、これらの産業立地における法則性は、ジップ則として知られる、都市規模分布における法則性と、本質的に同等であることが明らかにされた。第三に、労働者の立地は、学歴の違いにより明確に異なり、これも産業立地と密接に連関していることが明らかにされた。特に、対象期間において、労働者の学歴は大幅に向上しているにも関わらず、都市間の相対的な労働者教育水準には、有意差が見られないことが示された。これらの結果は、人口・人的資本・産業の空間分布が、単純かつ安定的な法則で特徴付けられることを意味し、人口・人的資本・産業立地の三面から、空間経済における自己組織化の実態が明らかになった。 New Economic Geographyモデルを元にした一般均衡都市システムモデルを構築し、これを元に、計算機上で大規模な都市システムの自己組織化分析を可能にするシミュレーションプログラムを開発した。これを用いることで、上記実証結果の第一・二点の理論的検証が可能になった。
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