本研究は、重商主義的貨幣信用論を体系的に総括したジェイムズ・ステュアートの信用制度論を検討し、その理論的核をなす土地担保発券銀行論の特質について、国際的な資金の流通を重視する今日的な問題関心から考察したものである。 従来のステュアート研究においては、ステュアートの土地担保発券銀行論は、貨幣と土地とを同一視する重金主義的な見地に立つ理論として低く評価されてきた。けれどもステュアートが担保としての土地を重視したのは、土地が長期的な資金の運用手段として役立つことを認識しつつ、それが国際的な資金の流通において重要な役割を果たすことを理解していたからだと考えられる。たとえば、国内で貨幣が過剰に発行された場合に、土地が過剰な貨幣の長期的な投資対象として役立てば、過剰な貨幣は国内で吸収されることになる。かりに国内にそのような投資対象がなければ、過剰な貨幣は投資対象を求め鋳貨として国外に流出し、国内流通の規模が収縮して国内産業に打撃を与えることにもなろう。また、貿易赤字によって対外支払いが増大する時に、国内の土地を担保にして外国から長期資金を調達することができれば、対外支払いによる国内流通の収縮を避けることが可能である。 このようにステュアートは、資金が急激に国外に流出するととによって国内流通にもたらされる破壊的作用を重視しつつ、国内からも国外からも長期的な資金をひきつけうる国内的機構が存在することによって初めて、国内流通の相対的な独立性が確保されうるという点を明らかにしているわけである。本研究は、以上のようなステュアート土地担保発券銀行論の今日的意義を解明したものである。
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