研究概要 |
本研究の主目標は、知識論の系譜を経済学の歴史に即してたどることである。具体的には、これまで研究してきたジョン・レーを手がかりに、18世紀的な知識の捉え方から19世紀的な知識の捉え方への転換を対比する研究を行った。デイヴィッド・ヒュームをはじめとする18世紀の経済学者は、知識について、それを支える市場という制度さえあれば、経済全体に知識が行き渡り経済は発展すると考えていた。他方、レーの同時代人である1820から1830年代のイギリスの古典派経済学者たちになると、知識と経済発展の関係は、すでにある市場を前提とするようになる。レーの貢献は、これに異論を唱え、知識が経済発展にうまく結びつくためには政府の介入を含む制度が重要であることを示したといえる。以上については、『経済学会年報』第40号の論文で概要を明らかにした(本誌は査読制をとる学術雑誌であり、本論文は編集委員会からの委嘱による)。 上記の研究との関係で、レーとの理論的な共通性が指摘されてきたオーストラリアの経済学者ウィリアム・エドワード・ハーンの知識中心型経済成長理論について、レーとの共通点と相違点を明らかにする形で検討した。以上については、History of Economics Review, No.33の論文で概要を明らかにした(本誌は査読制をとる学術雑誌であり、本論文は査読を経て掲載された)。
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