研究概要 |
・高齢者自己負担の改定と診療点数の分布について 平成13年1月に老人が医療機関で診療を受けた際の自己負担の仕方が変更された.本稿では自己負担の変更により医療サービスに対する需要側と供給側がそれぞれどのように行動を変更するかという点について簡単に整理し,供給側でどのような変更があったかをレセプトデータにより概観する.そして医療機関側の行動の変更が具体的にはどのような診療行為の変更によってなされたのかという点について統計モデルを用いて説明する.結果としては,疾病ごと,あるいは診療期間ごとに一様にどの行為が増えた(減った)という事が見られるわけではないが,従来,「薬漬け」として非難されてきた投薬行為が,診療点数の疾病内均質化が進んだ場合ですら,減少しているわけではない.一ヶ月の間に複数回の診療を受けることが割高になったため,少ない診療と投薬による診療の方が効率的であるということを選択した結果であるかもしれない. ・Effects of the Reform of Social Medical Insurance System in Japan(吉田あつし氏との共同研究) 外来患者の受診行動が,自己負担率改定によって受ける影響について研究した.対象とした平成9年の改定においては,被保険者本人の負担率のみが改定されたが,本人のみならず,その家族にも受診抑制の傾向が,分割表や統計モデルの結果から確認された. ・A New Time-varying Semiparametric Duration Model 観測されない異質性の分布として,Laguerre多項式を用いた一般的な形を想定した.時間可変的な持続時間モデル(time-varying duration model)の漸近的性質(推定量の一致性)について証明を行った.このモデルは自己負担額が入院期間に応じて変化していき,個体差の大きな入院データの分析に応用可用である.
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