研究概要 |
本研究は、高次元の多変量ボラティリティ変動モデルをマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法によるベイズ推定によって分析する手法を確立し、それをポートフォリオの市場リスクを評価するのに応用することを目指すものである。 平成13年度は、資産の価格変動の同時確率分布を評価するための高次元の多変量ボラティリティ変動モデルとして、多変量ARCH型モデル、コピュラによる多変量分布のモデル化、マルコフ分布混合モデルなどを軸にモデルの推定の実現可能性を検討した。多変量ARCH型モデルは資産の価格変動の共分散行列が過去の価格変動と過去の共分散行列に依存して変動するようにモデル化したものである。コピュラモデルは各資産価格の周辺分布関数をコピュラ関数によって組み合わせて複数の資産価格の同時分布関数を構築するモデルである。マルコフ分布混合モデルは多数の資産価格の分布を比較的少数の分布の混合として表現することで高次元の問題を扱おうとするものである。本研究の目的は高次元(資産数は3桁以上)の同時確率分布をボラティリティの変動させつつ安定的に推定することである。比較検討の結果、多変量ARCH型モデルとコピュラモデルは資産数が2桁になると安定した推定が難しくなることから研究対象から外し、マルコフ分布混合モデルを中心にしてモデルの開発を進めることにした。 現在取り組んでいるマルコフ分布混合モデルはボラティリティの異なる幾つかの対数正規分布(これを成分という)から構成され、各資産をこれらの成分にマルコフ連鎖に従う確率で分類することで資産価格の横断面の確立分布を近似するようになっている。このモデルは比較的簡単で推定も容易であり、3桁以上の資産数にも十分対応できる。今後の改良の方向としては、(1)成分の混合をマルコフ連鎖ではなく他の時系列確率モデルに替えてみる、(2)対数正規分布の替わりにガンマ分布などを分布混合の成分に使う、などが考えられる。平成14年度はモデルの改良と平行し,実際のデータを使ってモデルのリスク評価のパフォーマンスを検証する予定である。
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