本年度は昨年度の研究を引き継ぎ、ミクロ経済学と整合的な便益評価理論を具体的な実務に役立つ形で整理した。まず、価格と限界費用が等しいファーストベストの状況では、便益の計算は簡単であり、交通投資が行われたルートの消費者余剰と生産者余剰を足したものが総便益となることを確認した。これは、他のルートでは、消費者余剰の変化と生産者余剰の変化が完全に相殺するからである。その上で、価格と限界費用が等しいとは限らない、より現実的なセカンドベストのケースの便益評価方法を導出した。セカンドベストの状況下では、以下の3つの方法で、正しい便益を求めることができるが明らかになった。第一に、すべてのルートで消費者余剰と生産者余剰を計算して加える。第二に、交通投資が行われたルートの消費者余剰と生産者余剰を足したものに、他のすべてのルートで発生している純外部性(限界費用と価格の差)を加える。第三に、ファーストベストの場合の総余剰に、すべてのルートで発生している純外部性を加える。これら3つの方法を知ることにより、実務で得られた便益評価値を様々な方法で検証することが可能になることを示した。さらに、本研究の目的のひとつは、実務的に役立つ形で便益計算方法を確立することであったため、現実のガソリン税等の存在も考慮して、以上の消費者余剰、生産者余剰、純外部性を具体的にどのように計算していくのかも、豊富な例を使いながら導出した。 これらの成果の一部を、2002年12月の応用地域学会で発表したが、今後、とりまとめて、国内外の雑誌に投稿し、広く公開したいと考えている。
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