本研究は、現代における経済活動のグローバル化が、発展途上国の労働や労働組合の経済的及び政治的な地位に、またそれを考える上で無視できない国家-労働関係(労使関係における国家の役割及び能力)にどのような影響を及ぼしたのかという問題について、途上国の中でも最も急速にグローバル化が進んだ好例とされるメキシコにおける自動車産業の事例を基に考察することを目的とした。本研究はまた、この事例分析を通じ、国家-資本(企業)関係も含めた、より広い意味での政治経済システム、具体的には、戦後の経済・社会発展を支えてきた(開発)国家を中心とする政治経済体制がグローバル化の中でどのように変貌を遂げつつあるか、という点まで追究することを課題とした。 上記の研究課題に基づき、本研究は国内で文献調査を行うとともに、平成13・14年度の2年にわたりメキシコ現地でのフィールドワークを実施した。現地では、本研究課題に関連する最新の文献及び統計等の資料・データを大学図書館・研究所等で収集するとともに、関係者に対する聞き取り調査を実施した。聞き取り調査は、労働組合(主に自動車労組)の幹部や政府機関(日本の労働省や経済産業省に該当する機関)の官僚、企業(自動車・同部品メーカー)の担当者等を対象に、80年代以降のメキシコ経済の自由化・グローバル化の背景や、労働・国家の役割(経済管理能力)に及ぼすその影響等について、文献・資料では得られない情報を得ることを目的とした。これらの現地調査の結果、本研究課題についての知見を深めることができた。 以上の研究活動を踏まえ、平成13年度には学術雑誌に、また平成14年度には図書(担当一章分)(近刊)に、その研究成果の一端を発表することができた。
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