研究概要 |
13年度は基本所得構想と政治経済学との関連に焦点を当てて研究を行った。ジェンダー研究者からは、本構想が従来の社会保障政策よりジェンダー平等的であるという点での評価がなされている。他方、本構想が政治経済学的にいかにして正当化されうるのかについて、ここ数年議論が活発化している。この両者を検討し接合させることを通じて、「ケアの政治経済学」視点の構築を目指したのが13年度の研究であった。特記すべき事項としては、3月に基本所得構想の提唱者の一人、B.ジョーダン教授(Exeter University)のもとで研究を行うと同時に、イギリスにおける基本所得構想の中心であるシティズンズインカムセンターでインタビューを行ってきた。 引き続き14年度は、上記研究とアマルティア・センの福祉理論との関係について研究を進展させた。夏期にはそれまでの成果をヨーロッパ社会政策学会で報告すると同時に、幸運にもFeminist Economics誌主催の,A.Sen教授を囲むジェンダーについてのワークショッブに招聘された(Oxford All Souls)。また13年度に引き続き基本所得とジェンダーについての調査を行った。 これらの成果は裏面の発表論文の他、一冊の研究書として近々まとまる予定であり、その意味で一区切りがつくけれども、本研究で明らかになった課題については引き続き、Bath大学、Cambridge大学などの研究グループとの連携のもとに進められる。 またセンの福祉理論に関述して、Sakiko Fukuda-Parr氏(UNDP)、lan Gough教授(Bath University)の招聘を実現した。いずれも別のファンドによる招聘であるが、招聘のきっかけとなる交流は、本研究の中で培われたものであることを感謝を込めて報告しておきたい。
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