本研究は、オランダにおける家畜糞尿や生ゴミなどの有機性廃棄物の処理・再利用に関わる政策・制度の実態を明らかにするとともに、その政策、特に経済的手法の実効性を明らかにすることを目的とする。 本年度は、家畜糞尿対策を中心にオランダめ現地調査を行った。まず、農業・自然管理・漁業省、オランダ農業経済研究所およびオランダ農業者会議において、家畜糞尿対策について聞き取りおよび資料収集を行った。つぎに、国立保健・環境研究所において、有機物を含む、家庭からの廃棄物処理の現状についても説明を受けた。さらに、先進的な酪農家、養豚農家、肉牛農家、および糞尿輸送会社を訪れ、糞尿処理の実状を視察した。また、実証農場において、経営と両立した糞尿の環境負荷低減の取り組みについても聞き取りを行った。 オランダでは、農場単位で窒素とリンの出入りを把握するミネラル・アカウンティング・システム(MINAS)の導入が始まっている。このシステムでは、窒素とリンの投入と算出との差を環境への流出とみなし、環境への流出が一定水準を超える場合に禁止的に高い課徴金を設定することで、窒素とリンの流出を一定水準以下に抑えようというものである。EUは硝酸塩指令で窒素投入量を規制しているが、オランダは家畜の飼養密度が高く、この規制を遵守できないため、代替策としてMINASを考案した。MINASは、制度としては、投入量ではなく環境への流出を計算して管理するという、EUの規制よりも合理的なものであるが、規制値としてはいまのところEUより緩いものとなっていることが明らかになった。
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