本研究は、オランダにおける家畜糞尿や生ゴミなどの有機性廃棄物の処理・再利用に関わる政策・制度の実態を明らかにすることを目的とした。現地調査を2回実施し、国の農業・環境部局、研究機関、農場、ごみ処理施設などを訪問し、聞き取りを行った。 オランダの畜産は集約化が進み、家畜飼養密度はヨーロッパでも最高である。過剰糞尿対策は1980年代半ばから始まった。それ以降、対策は徐々に強化され、2001年からは、窒素とリンの農場間の出入りを記録し、窒素とリンの環境中への逸失が一定水準を超えると課徴金が課されるという、ミネラル収支制度(MINAS)が全農場に適用されている。 MINAS導入の背景には、以前から問題となっていた、高い家畜飼養密度とそれに伴う環境負荷があるのだが、1991年に制定されたEUの硝酸塩指令への対応という側面も重要である。MINASは、家畜糞尿のみならず化学肥料も対象とする包括的な窒素・リン対策であり、硝酸塩指令に定められた糞尿を起源とする窒素施用量基準の代替策としての性格を持っていた。しかし、EUの理解が得られず、農場内で施用しきれない家畜糞尿を抱えている農場に、他の農場に糞尿を散布する、あるいは輸出するなどの契約を事前に結ぶことを義務づける、糞尿処理契約制度(2002年から実施)の中に糞尿起源の窒素施用量基準を盛り込むことになった。 一方、1994年から、オランダでは生ゴミの分別が義務づけられた。自治体が家庭からの生ゴミを収集し、堆肥化施設へ送られる。堆肥化施設は全国で25か所あり、うち3か所が嫌気性でメタンガスを生産している。堆肥は事実上無償で実需者に渡されており、生ゴミの収集・堆肥化の費用は家庭のゴミ処理手数料で賄われている。
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