昨年提出した「科学研究費補助金(奨励研究(A))交付申請書」中の「研究の目的」及び「研究実施計画」にもとづき、本年度の研究内容は展開された。その内容は以下の通りである。 (1)「戦前石油産業の販売網形成」について。大阪の旧石油問屋徳野石油株式会社を訪問し、同社所蔵史料『金銭出入帳』を借用した。そして、マイクロカメラを購入して同史料を撮影し、内容を分析した。同史料はこれまで未発見の一次史料であるため、その学術的価値を考え、「近代の石油産業における流通チャネル研究のための基礎資料(1)(2)」として、史料研究の形で公表する(「11.研究発表」参照)。以上は主に日本石油に関する資料であるが、当該期同社を上回るシェアでありながらその活動内容に不明な点が多いライジングサン石油(現昭和シェル)について、ロンドンのシェル石油本社を含めた資料収集が必要と考えるに至った。よって次年度にそれを行った後、研究成果を総括して学会誌に投稿する予定である。 (2)「石油資本の勃興と新潟県」について。本年度前半に、旧帝国大学鉱山学科学生実習報告等の資料収集・分析を行い、それを踏まえて後半に同名の論文を脱稿した。現在ゲラ刷りが進められており、2002年度中に武田晴人編『地域の社会経済史』という表題で、有斐閣から刊行される予定である。 (3)既発表論文を含めたここまでの研究成果を、『近代日本の石油市場と石油産業』という表題で、東京大学大学院経済学研究科に博士論文として本年度末に提出する。 (4)また、「明治前期の石油産業」についても、国立国会図書館・国立公文書館等で行政文書を中心に資料収集を行い、その整理を進めた。このテーマについては次年度も継続予定である。
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