19世紀東部ドイツ(プロイセン王国)の鉄道業とりわけ邦有鉄道の運営に関し、その内部組織の問題(労働関係・雇用・人事)について、鉄道職員を対象に集計調査にもとづく社会史的分析(ブロソポグラフィ)をおこない、それにもとづく社会経済史的考察を雑誌論文として発表した。おもに旧東独各地公文書館所蔵の公文書史料(プロイセン王国商務省、同内務省、同大蔵省、同内閣官房公文書)を利用し、ドイツにおける鉄道建設の本格的展開期(1850年代)を中心的な対象時期に以下の作業をおこなった。すなわち、1.プロイセン国有鉄道における軍-官僚制的制度外からの雇用例の集計分析、2.48年革命期直後の私鉄企業における職員の思想動向調査にもとづく再集計・分析整理である。このうち1.については、官僚制外部からの人的資源の導入の重要性をあきらかにすることで、初期国有鉄道における官僚制システムの強い影響を相対化する結果を得た。また2.については、各地鉄道企業における労働関係・雇用形態の多様性をあきらかにするとともに、成立期プロイセン鉄道企業内部において企業家・高級職員層=ブルジョアジーによる下級職員・労働者=「民衆」に対する人的・制度的な浸透・働きかけという、48年革命期と同様の構図がみられたことを指摘した。
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