研究概要 |
1.19世紀ドイツ鉄道史についての文献を収集することにより、1980年代以降のドイツ鉄道史に関する研究動向を調査した結果90年代以降は大きく政策、地域経済・地域工業化、組織・人員の三つの角度からの新しい研究の動きが見られることを指摘し、これらを有機的につなく視点として鉄道業における人的資本の形成に着目すべきことを明らかにした。また企業者史・経営史としてドイツ鉄道史研究の方法論的前提を構築するため、最近のドイツ経営史学界における経営史研究の方法論をめぐる論争を整理した。 2.19世紀後半プロイセン国有鉄道勤務駅職員の職員団体の活動とその様態を、当該職員団体が発行した機関紙記事により調査した。駅助役団体の活動・様態は19世紀ドイツにおける中下級職員の一般的な特徴としてあげられるものにほぼ符合していたが、それら(心性ならびに行動面にみられる「官吏」身分への執着、政治的保守性、職種ごとの閉鎖性など)は19世紀ドイツ社会における前近代的な要素の存続よりもむしろ、給与・賃金の上昇・安定と処遇の改善という経済的要求に裏付けられたものであることを推察できるとした。 3.ドイツ連邦共和国ベルリン州立公文書館所蔵の旧プロイセン王国商務省文書中、国有鉄道人事に関する記録(主にRep.93E, Personalia)により、国有鉄道職員および鉄道関連の内務省職員の社会的出自ならびに勤務(就職・昇進等)状況のデータ収集を行った結果、文官任用証の発行を受け国有鉄道・商務省に任官した下士官出身者において任官による社会的上昇がみられたこと、一方これらの採用によって国有鉄道に軍隊的規範・価値観や事務的能力の導入がみられたとはいえないことが確認された。
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