平成13年度における研究では二度のコスタリカでの現地調査を行った。一度目(平成13年8月)の調査においては、現在コスタリカの公的保健医療部門で進められている効率化のための手法である「経営契約」についてのアンケートを行った。約10の医療機関に勤務する医師と看護婦、経営職員を対象としたアンケートにより、今日の保健医療部門が直面している問題の性格とその対応策としての「経営契約」の有効性を検討する材料を得た。12月にはこの課題について国際開発学会での発表を行った。来年度完成稿を作成し、学会誌へ投稿の予定である。 二度目(平成13年10月)の調査においては、コスタリカのカルタゴ市で1995年から2000年までE行われた日本の経済協力(プロジェクト方式技術協力)「胃がん早期発見プロジェクト」の現場を視察し関係者から同プロジェクトの進展に当たって生じた問題の聞き取りを行った。このプロジェクトは日本の経済協力によって行われた保健医療部門における唯一のプロジェクト方式技術協力であるが、そこで生じた問題は日本とコスタリカとの医療技術の相違や看護技術の相違、保健医療システムの相違による部分が多く、コスタリカの保健医療システムの特徴を把握する上で格好の材料となると考えられたためである。この課題については発表用の草稿を準備中である。 また、文献研究によりラテンアメリカ・カリブ地域の中においてコスタリカの保健医療システムが占める位置付けを明らかにするよう努めた。経済発展段階に比して高い保健医療指標は、財政支出に占める保健医療支出・教育支出が大きく、単一社会保険により実質上全国民をカバーするというラテンアメリカ・カリブ諸国中まれな経験の産物であることを地域諸国の類型化により示す研究を進めた。この課題についても発表用の草稿を準備しており来年度発表の予定である。
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