平成14年8月にコスタリカを訪問し、医療施設および福祉施設の見学と情報収集を行った。調査の主な論点は、近年、コスタリカの公的医療の専門医療において待機患者(リスト)が少なくないのはなぜか、だった。途上国の中では比較的多くの資源を医療に用いており、医師数も少なくないコスタリカだが、既存の医療資源を生かしきっていないと考えられたためである。 首都サンホセ市のメキシコ病院を訪れ、近年保健医療システムの改善策として導入された経営契約の機能について院長、外科部長らの意見を聴取した。まだ経営契約が導入されてから日が浅いが、職員に、経営契約による医療生産量の把握が必要との理解は浸透している。医療サービスの生産増を図り、多いときには3ヶ月に及んでいる専門医療の待機期間を縮小する必要があるという点では合意があると感じた。 コスタリカの公的病院における問題点として、医師の勤務態度が必ずしも良くないことが明らかとなった。すなわち、一日に診断する患者を午前中に診断してしまい、午後になると自分の個人診療所で市場ベースの診断を行う場合が少なくない。ただし、その一方で、コスタリカの公的部門では医師の労働組合が強く、1992年の労使協定によって1時間当たりの診断数を4人(専門によっては5人)までとする規制がなされており、これが制度上の医療サービス生産増への障害となっていることが判明した。 さらに、各病院には医大生が研修医として働いており、それが医師のこのような勤務態度を温存する要因にもなっている。また、医師の不正が少なくなく、ひどい場合には機材の盗みまで行われているというアンケート結果が示されていることが判明した。医療に対する不信感を増長させないために、このような不正は少なくする努力が必要と感じた。医学教育と医療実務との連繋についてより詳細な調査をすることが今後の課題である。
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