今年度は、バルト海貿易に関するデータ入力と、海外の研究者とのレビューを中心に研究を進めた。データ入力に関しては、『スウェーデン貿易統計』の第1シリーズの入力作業が中心であった。このシリーズは、1738年から1800年頃までのスウェーデン全国の貿易統計を収集したもので、我が国ではまだ誰も使った人がいない史料である。この史料の入力がほぼ終わったので、今後、これをデータベースとして利用しながら、研究を進めて行きたい。この史料と、私がこれまで主に利用としてきた『ズンド海峡通行税台帳』の比較は、ヨーロッパ近世経済史研究のうえで画期的な成果をもたらすはずであり、現在、その研究に着手したところである。このような研究はこれまでも世界的に例がなく、かなり画期的な成果が獲得できるものと期待される。 また、平成14年9月にイギリスに赴き、ロンドン大学教授のパトリック・オプライエンおよびディヴィッド・カービー教授、レスター大学のリチャード・ボニー教授からのレビューを受けた。特にディヴィッド・カーB教授からは、今後国際的な共同研究を進めることを目標として、さまざまな国のバルト海貿易の研究者が協力すべきであるという点で意見が一致した。パトリック・オブライエン教授とは、近年世界的な規模で研究が進んでいくグローバル・ヒストリーの中で、バルト海貿易をはじめとする海洋史の研究の重要性に関して意見が一致し、彼が提唱するグローバル・ヒストリーとの共同研究も提案された。 今後は、このような国際協同を目指して研究を続けていける見通しがたった一年間であった。
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