ブリテン綿工業におけるスコットランドの位置づけに焦点を当てた平成13年度の研究に続いて、今年度の研究は1790年代に刊行した国勢資料を用いてスコットランド各州の人口、農・牧畜業、繊維生産に関する初歩的な統計分析を行い、18世紀末スコットランドの経済構造の実態と繊維生産の地域分布を解明しようとするものであった。5月末の第71回社会経済史学会全国大会と11月末の大阪商業大学商経学会で報告を行った結果、上述した課題に対する答えとして次の二点に要約できる。 まず、亜麻、羊毛、綿生産が急速に成長しているにもかかわらず、18世紀末のスコットランドは依然として農業社会であることが確認できる。その中で商業生産としての繊維生産に関しては、基本的に王立都市で織布や漂白などの仕上げ生産、原料調達や製品販売などの流通過程が行われ、そして紡績などの前方工程が王立都市の周辺農村で営まれていたことができる。 次は各州の人口規模、農業生産並びに繊維生産がほぼ正の相関にあり、農業生産であれ、繊維生産であれ、いずれもロウランド地域に集中していることが確認できる。そして、綿、亜麻、羊毛、素材ごとの繊維生産の地域集中が進行している一方、多くの産地では綿生産における機械化の動きが羊毛や亜麻生産分野にも波及していることが看取できる。
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