研究概要 |
本研究の目的は、少子高齢化の急速に進展するわが国における望ましい租税・社会保障政策について、効率性および公平性の観点から定量的に検討を行うことである。分析手法として、ライフサイクル一般均衡モデルによるシミュレーション分析を用いた。 Okamoto "Simulating Progressive Expenditure Taxation in Aging Japan" (forthcoming in Journal of Policy Models)での分析の結果、新たな税形態である累進支出税を導入することにより、所得税中心の現行の税制度の下で生じるであろう大幅な社会厚生の損失を克服できる可能性があることが示された。すなわち、所得から支出への課税ベースの移行は資本蓄積を促進し、また支出税に累進性をもたせることによって所得再分配を効率的に実施できることが示された。 この結論を踏まえて、Okamoto and Tachibanaki(2002) "Integration of Tax and Social Security Systems : On the Financing Methods of a Public Pension Scheme in a Pay-as-You-Go System" (in Ihori and Tachibanaki ed.,Social Security Reform in Advanced Countries, Routledge)では、具体的にわが国の租税と年金制度の改革の方向性について検討を行った。現在公的年金制度の基礎年金部分の3分の1が税収からのトランスファーによって賄われているが、これを2分の1に増加させる方向で議論が行われている。分析の結果、政府のこの方針が支持されることとなった。今後さらに租税と年金制度の統合を推進し、究極的には累進支出税で全収入を賄うことが効率性および公平性の点で最適であるとの結果が得られた。
|