本年は米国における関連研究の調査を主に研究をすすめた。最大の成果は、米国における金融理論研究の中に本研究と密接に関連するものを発見したことである。 米国における金融仲介は、一定の利子支払いを約束する預金ではなく、収益が不確実な投資信託(mutual fund)の方が支配的であり、その研究は極めて盛んになされている。研究の中で、最近特に注目を集めているのが「行動ファイナンス」理論と呼ばれる新しい研究分野である。 行動ファイナンス理論は、効率市場仮説を前提とする従来の理論では説明できないアノマリーに挑戦しようとする斬新な研究分野である。夏季に行った米国での調査で、この分野が米国東部(主にニューヨーク、ニューヘブン、ボストン、シカゴ)の研究者によって盛んに研究され、ある種のブームを起こしていることがわかった。 その中で本研究と深く関連する研究をしているのが、行動ファイナンス理論の中心的な研究者であるAndrei Shleifer教授(ハーバード大学)である。Shleifer教授は、投資信託において投資家(預金者に相当)が過去の投資収益に基づいて銀行(fund)を選択するという事実に注目し、そのことが銀行による効率的な投資(裁定取引)を阻害することを理論的に示した。Shleifer教授の研究は本研究と多くの相違点をもつものの、投資家(預金者)が過去の運用成績だけに基づいて、銀行(fund)を評価するという前提、およびそれが銀行の行動に悪影響を及ぼすという点で共通している。 Shleifer教授の研究との関連を明らかにする形で、また新たな研究の能性が広がるものと期待される。
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