本年度は、(1)製販統合文献と需給調整過程に関するレビューを行うとともに、(2)製造業者・情報ネットワーク企業・物流企業へのインタビューを実施し、(3)外部研究機関から生産・配送・流通に関する多くの資料収集を行った。そこから得られた本年度の研究成果は次の2点に集約される。 第一に、消費財流通における製造業者と小売業者の需給調整様式が、在庫保有による調整ではなく、在庫の発生段階での調整に移ってきているという現実を把握したことである。伝統的な流通における需給調整は、小売業者や卸売業者が在庫を保有することで、実際の消費時点までの調整を行うと言われていた。ところが、製販統合の現実を見ると、製造業者は小売業者と連携しながら、在庫発生の意思決定をおこなう生産計画段階にさかのぼって調整を行っている。こうした現実に対する理論的研究をレビューし、その成果を論文にまとめた。 第二に、製造業者が小売業者と連携して需給調整を行うことは、新たな企業間調整過程を必要とする。本研究では、その企業間調整過程をオーダー・エントリー・システムのマネジメントと位置づけている。製造業者は取引関係にある小売業者に、通常の発注よりも時間的に先行して計画的に発注情報を提供してもらうような協力を求めなければならない。そのうえで、小売業が持続的に製造業者へ情報提供できる組織体制を作り上げなければならない。こうした企業間調整過程の構築・維持を分析することが、製販統合の実行・維持過程を研究する上で重要な視点になると考えられる。
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