13年度は、主に文献研究とケース研究を行った。文献研究においては、マーケティングや消費者行動の分野で行われてきた新製品の普及研究をレビューした。その結果、消費者がいかに新製品を採用するのかということについては、今後、情報処理のアプローチから研究する意義があるとの示唆を得た。特に、革新的な新製品がどのような消費者にどのように知覚されるのかということについては、従来あまり研究がされていない上に、情報処理アプローチからの解明が有効であると考えられた。 ケース研究においては、ネット・コミュニティと呼ばれる、インターネット上で様々な会話を書きこむことができる場を取り上げ、ネット・コミュニティを主宰する事業者へのインタビュー等を行いながら、消費者が新製品についてどのように考えているのかということについて考察を行った。ネット・コミュニティの中には、新製品をトピックとして扱ったものもあり、そのようなネット・コミュニティで交わされる会話を分析することによって、消費者が新製品をどのように知覚し、また、ネット・コミュニティを通じて、新製品に関する消費者間のコミュニケーションがどのように行われているのかが見出すことができた。扱ったケースは、今日急激に普及しているブロードバンドに関するネット・コミュニティと、もう一つ、ブロードバンドと対比する意味で、すでに成熟製品となっているバイクのネット・コミュニティである。この両ケースを比較することで、製品の革新度によって、消費者間で交わされる会話がどのように異なるのかということについての示唆が得られた。
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