研究概要 |
平成13年度の主要研究実績の一部として,貿易取引において必ず利用される貿易定型取引条件に関し,それらの条件を規律するグローバル・ルールとも言われるインコタームズについての研究を行ったことがあげられる. 研究は、先に提出した奨励研究(A)研究計画で述べていたように,実際界で活躍する実務家の声はもちろん,ICC(International Chamber of Commerce,国際商業会議所)の2000年版のインコタームズ作成関係者の見解を取り上げ,貿易定型取引条件を分析したものであった.それによって得られた知見を簡略化すれば次の諸点にまとめることができる(但し,これはまだ結論と言うべきものではなく来年度たる平成14年の研究を通した上でなければ明確には言えない). 実際界ではインコタームズに含まれる貿易定型取引条件の幾つかがICCの意図に沿った形では用いられていないこと.さらに,そのような状況をICCが認めていること.そして,その解決策としてICCはインコタームズの取引条件を,従来とは異なる解釈を用いて,実務慣行に近付けて理解しようとしていること,である. 一例としてFOB条件を取り上げる.本来,FOBは海上輸送のみに用いられるものであって,航空輸送を含む複合輸送の場合にはFOBに替わってFCAが使用されるべきとされる.しかし,実務では依然としてFOBが多く使われる.この実態をICCは直視し,実際界での慣行にあわせるため,運送形態を基準に諸条作を2分化する従来の方法(「いかなる輸送形態でも可能とする諸条件」と「海上および内陸水路輸送にのみ可能とする諸条件」とに分ける)を否定し,本船手すり(ship's rail)を基準とする新たな解釈法を生み出した.この解釈をもってすれば,FOBを含む多くの取引条件は,複合輸送に代表される,いずれの輸送形態でも明確に利用可能となる.
|