本研究は、平成11年度科学研究費助成研究(課題番号:11730055)の継続研究に位置づけられる。家計における金融資産選択行動のマクロ的な構造について『貯蓄動向調査』の1970年から2000年のデータを使用し、ベイズ型コウホート分析法を用いて分析を行った。世帯主自身の出生コウホート(「世代」)、世帯主が加齢してゆく過程(「年齢」)、その背景となる「時代」要因に分離してその有効性を確認し、三つの効果が家計における「金融資産選択」にもたらす影響について解釈を進めた。 その結果、大部分の金融資産において年齢効果の影響が大きいことが示されたが、有価証券や債券などリスク資産の選択には特定の世代効果が強いという結果を得た。また、米国家計の金融資産選択行動も分析を行い、日本の家計の選択行動と比較を行った。 今後の課題として、2002年4月からのペイオフ解禁、確定拠出型年金の導入など、個人金融市場が劇的な変化を遂げようとしている今日、2000年までのデータ分析結果では金融制度改革の影響がまだ顕著に現れるには至っておらず、継続して研究する必要が指摘される。これらの研究を通じて人口論的観点から新たな消費者行動のマクロ的な理論構築に貢献したい。
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