今年度は、「米国IT多国籍企業のインターネットを利用した特許ポートフォリオ戦略の研究」の前半部として、主に理論的研究に重点を置き考察を行ってきた。とくに文献研究の中から、以下のような事実を新たに発見することができた。 すなわち、米国企業の多国籍化が始まった1960年代から、IT革命が本格化する1990年代前半にかけては、米国多国籍企業の技術戦略は技術開発戦略と技術管理戦略の交互台頭の動きを示しており、これは内部経営資源の範囲内で技術戦略進化を進めてきたことを意味している(=内的成長下での技術戦略進化)。 一方、1990年代後半以降の米国多国籍企業の技術戦略は、技術開発戦略と技術管理戦略がそれぞれ独自の進化を遂げつつあり、これは外部経営資源の活用により限られた内部経営資源の制約が外されたことによるものと考えられる(=外的成長下での技術戦略進化)。 そして、本研究のテーマである、インターネットを利用した特許ポートフォリオ戦略とは、こうした外的成長下での米国IT多国籍企業の代表的な技術管理戦略として、理論的に位置付けられることが明らかにされた。 本年度は、こうした研究成果をまとめた論文を大学紀要に掲載し、この他にも学会大会において同研究成果の報告を行っている。 1.「米国多国籍企業の技術戦略サイクル・モデル」日本経営学会・第75回大会自由論題、桃山学院大学、2001年9月6日〜9日。 2.「多国籍企業の技術戦略サイクル・モデル-第二次世界大戦後の米国多国籍企業による技術戦略の進化過程」国際ビジネス研究学会・第8回全国大会自由論題、パルセいいざか(福島大学)、2001年10月20日〜21日。 次年度は、こうした理論的含意を持って、主にアンケート調査といった実証研究を中心に、より具体的に米国IT多国籍企業のインターネットを利用した特許ポートフォリオ戦略の実態について、考察を進めることとしたい。
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