本研究は、環境共生という観点から、建築家や市民企業家とNPOがネットワークを形成し、企業とも連携しながら、環境問題に取り組む活動を経営組織論的に分析・考察することを目的としている。特に、森林保全、地球温暖化対策として、国産材を活用した住まいづくりや町並み形成に焦点を当て、視点や立場の異なる多様な主体がどのように協力関係を構築し、草の根ネットワーク的な運動を形成し、持続化させていくのかについて検討を行っている。平成14年度は、前年度に引き続き、文献調査を行うともに、全国で展開されている国産材活用住宅の運動およびNPOの活動について調査を行った。とりわけ、秋田県二つ井町と関東地域を結んで展開されている産直住宅運動「モクネット」およびNOP「緑の列島ネットワーク」に関して参与観察的に調査を実施した。その結果、運動の展開過程で、国産材住宅という価値をいかに社会的に受容させるのかという正当性構築(legitimacy building)と、運動のコアメンバーの確信・役割・意味の形成という期待形成(expectation formation)の戦略が重要であるということが明らかとなった。また、こうした運動が拡大していく上で、一般市民の参加を得て、交流の場が自己組織的に増殖し、運動の方向性、性格が変容していくプロセスも確認された。さらに、正当性構築と期待形成の間には、ポジティブなフィードバックプロセスがあり、そのためには適切な交流の「場」の設定と自発的な「場」の拡充が鍵となっていることが解明された。なお、この研究の成果は、内藤勲編『価値創造の経営学』(仮題)の第3章「国産材住宅の産直システムの形成」に反映される。
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