研究概要 |
まず,従来では統一的に把握されることのなかった,昨今の情報技術(IT)やME技術等を,総合的に「情報技術システム」という新しい概念として措定した。そのうえで,イギリス企業と日本企業の間で,情報技術のシステム・デザイン,とりわけJITにいかなる相違がみられるか,また,多様な情報技術を組織において利用するにあたり,文化の差異に基づく相違がどのように反映され,具体的にどのような形態として組織現象に表れているか,その伝播状況はどのようなものか,等について具体的事実に努めた。このうち,最後の課題については,ひとまず文化的作用が存在するかどうかが検討された後に,別の方法論を設定したうえで詳細に追究されるべき検討課題であると考えたため,本研究のなかでは十分には検討することができなかった。しかし,文化の影響が比較的具現化しやすいいくつかの組織的メカニズムとして,例えば「情報の上意下達志向」や「単純な職務設計」,「ジョブ・ローテーション」などの組織的メカニズムが存在していることが明らかとなった。今後は,そのうちのいくつか取り上げ,技術の伝播・移転プロセスを詳細に調査したり,あるいは情報技術システムを用いて職務に従事する数人のキーパーソンの組織行動に焦点を当てたりといった方向での検討が必要となると考えられる。 また,今回の調査の結果,JIT利用をしている在英日本企業のマネジャーは,今後,文化の差異を十分に認識しなければならないということが明らかとなった。例えば,イギリス企業が日本に進出する場合には,日本企業における一般的な日本人マネジャーは,その文化的特性からして「組織階層」を非常に重要なものであると認識しており,したがってその点に関する認識を十分踏まえたうえで,日常の経営活動を行っていく必要があり,情報技術システムの利用にあたってもその点を認識しておく必要があるという点が明らかにされた。
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